文化・芸術

2023年2月 3日 (金)

北海道の和紙工房「紙びより」が移転オープン

ただいま発売中の「北海道生活」冬号で、読者プレゼントをご提供いただいた「蝦夷和紙工房 紙びより」

北海道の和紙職人・東野早奈絵(とうの さなえ)さんの代表作「ゆきふみ」は、北海道の真っ白い雪に足あとが付いた、とても心あたたまる、かわいいカードです。

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東野早奈絵さんが営む工房が、札幌から江別市に移転オープンしたそうなので、行ってきました!

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江別市のJR大麻(おおあさ、と読みます。古来から縄や織物に使われていた天然素材で、昔は北海道にも自生していたようですね)駅から車で5分くらいの住宅地。

工房はギャラリー&ショップを併設した、三角屋根の一軒家です。

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中に入ると、ゆったりした空間に東野さんの和紙が展示されています。

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広い空間なので、大きな作品、たとえば壁に飾れるようなものなども展示できるようになったそうです。

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中央のテーブルには、一枚一枚ていねいに手すきされた和紙が買えるようになっています。中にはハルニレ、とうきび、など北海道の素材でつくった和紙も。

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特に北海道の植物でつくった和紙を「蝦夷和紙」として手がけた東野さん。これまで様々な素材にチャレンジしてきました。その独特の風合いは、やはり目の前で見て確かめないとわかりません。

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「いと恋し」シリーズは、紙すきの際に糸を入れて、まるで一筆書きのように描いたもの。

全く同じものは一枚もない、手すき和紙だからこその作品ですね。

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アクセサリーコーナーでは、ピアスやブローチ、髪飾りなどを販売。干菓子をかたどった和紙のピアスが素敵でした!

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訪れた季節は冬、和紙の雪ダルマ「すのーまん」など、かわいい小物にも出会えます。

東野さんがお一人で制作、そして展示販売している工房&ショップ・ギャラリーですので、定休日以外にも臨時休業があるそうです。訪れる際には事前にご確認くださいね。

「さっぽろ雪まつり」期間は、大通公園6丁目会場で出店しているそうですよ。→2月のスケジュール

蝦夷和紙工房 紙びより

住所: 江別市大麻園町7-9
交通: JR大麻駅より車で約5分
電話: 011-803-0404
HP: https://ezowashi.com
営業: 木~日曜・祝日 10:00~17:00
定休日:水曜(イベント、出張などにより臨時休業あり)→詳しくはHPへ

(編集長)

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2022年5月 1日 (日)

5月1日新発売!札幌・豊平館のレトルトカレー

札幌駅から大通、ススキノの繁華街を過ぎると、自然豊かな中島公園があります。

クラシックの演奏会で知られるコンサートホール「kitara(キタラ)」や、「渡辺淳一文学館」もあるこの公園に、ひときわ目立つ建物が重要文化財である「豊平館(ほうへいかん)」。

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近くにはサケも遡上する豊平川(とよひらがわ)があり、読み方がちがうのも面白いですね。

ブルーと白のコントラストも美しい西洋建築、もとは今の時計台の近くにありました。

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この二つの建物の共通点は、赤い星!つまり、北海道開拓使の五稜星ですね。赤い星の札幌の歴史的建造物を「北海道生活」でまとめて紹介したこともありますので、ご存じの読者の方も多いでしょう。

さて、この豊平館で5月1日からレトルトカレーが新発売になるというので、発表会に行ってきました!

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明治時代、外国から北海道開拓の基礎づくりにやってきた西洋人や要人など、さまざまな要人を泊めるために政府が建てたホテル。

その後、結婚式場としても長く札幌市民に知られており、その後、耐震工事などを経て現在の姿をとどめています。館内は歴史的建造物としての豊平館について学べるようになっています。

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館内はクラシカルな雰囲気が残されており、部屋のレンタルも可能。明治時代風の衣装を着ての記念撮影など人気だそうです。

さて、ここにお目見えしたのが「豊平館プレミアムカレー」。

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先ほどの時計台は、北海道大学の前身である札幌農学校の演武場なのですが、農学校の寮生が毎週カレーライスを提供されていたそうです。

同じく開拓時代の建物として、かつてレストランもあった豊平館のシンボルメニューとして、このプレミアムカレーが開発されたそうです。

全日本司厨士協会北海道地方本部のシェフたちが監修し、オホーツク・美幌町の有機野菜とオランダポークを使い、スパイスにもこだわった昔懐かしい味を目指したとのこと。

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実際に味わってみると、レトルトとはいいながら、ゴボウやニンジン、ジャガイモが大きくごろごろ入っており、タマネギをしっかり炒めた甘さの奥にスパイスも感じられ、それでいて昭和のお母さんのカレーみたいに毎日食べたくなるような親しみのある味わいでした。

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このカレーは、豊平館の中にあるカフェでも提供されています。

 

 

 

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また、豊平館の甘酒も新発売されたそうですよ。

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花見の季節には美しい桜が咲き誇る中島公園にありますので、甘酒でお花見も楽しいかもしれませんね。

夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と四季を通して愛されている中島公園。ぜひ、豊平館に立ち寄ってみて、札幌から始まった開拓の歴史を垣間見ながら昔なつかしいカレーライスを味わってみてくださいね!

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2022年4月 7日 (木)

ウポポイ、話題の「界ポロト」に泊まってみました。

現在発売中の「北海道生活」春号では、白老町に誕生した民族共生象徴空間「ウポポイ」を取材しています。

キュンちゃんと一緒に取材をし、トゥレッポんと夢の競演という楽しいお仕事もさせていただきました。

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このウポポイのおとなりに、今年1月オープンしたのが「界 ポロト」。星野リゾートの最高級ブランド<界>が北海道初上陸したことで話題になりました。

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三角屋根の温泉がポロト湖畔に現れて、なんとも幻想的な風景。昨年よりウポポイを取材しながら、いつも気になっていたので、ついに泊まることができました。

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ロビーでは、アイヌの魔除けをつくってみました。

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魔除けといっても、北海道の花やハーブなど天然素材を使ったポプリにも似た素敵なもので、好みの素材を選んでつくることができます。

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ウポポイでアイヌ文化にふれたあと、ここでもアイヌ文化にちなんだお話を聞きながら、楽しく体験することができます。

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できあがり!枕元において寝るのがおすすめだそうで、魔除けと、自分の好きな香りでリラックス、眠るときの楽しみもできました。

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お部屋はすべて、レイクビュー。なんと部屋付き露天風呂まであります。

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取材の相棒キュンちゃんをねぎらい、ポロト湖をみながらリラックスタイム。真冬だったので、ちょうどワカサギ釣りをしていました。

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お部屋で気になるのはアメニティなのですが、おしゃれなのが風呂敷。お風呂に入る際に衣類を入れたり、ちょっとおみやげを買って入れたりと、万能なのです。

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お部屋で、三角屋根や丸い屋根の二つの大浴場でモール温泉をじっくり堪能した後は、いよいよディナーのお時間。

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「まず、お酒を選んでください」とメニューを開いて驚いたのは、北海道の日本酒の豊富さ。かなり充実していて迷いまくった末、おすすめの飲み比べセットをチョイス。

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先付け「馬鈴薯海宝盛り」が出てきて、思わず笑ってしまったのは、クマさんのうつわ。地元の陶「輪果窯」に特注したものだそうで、白老町では陶芸がさかんなことだけあり、オリジナルのうつわをつくってもらっているところに感動しました。

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八寸、お造り、酢の物を盛り合わせた「宝楽盛り」にも、エゾリスなど北海道の動物をあしらったオリジナルの焼き物が使われています。何種類か動物があるそうで、行った時のお楽しみだそうですよ。

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メインは「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」。一人用にしていただきましたが、かなり豪華!

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鍋の〆には、醍醐つまりチーズをたっぷりかけて、リゾットに。和風の鍋のようであり、洋風のブイヤベースのようであり、最後には濃厚なシーフードリゾットが味わえる、一度に三度おいしい鍋でした!

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もちろんコースには、肉や魚など煮物や焼き物いろんな料理が出され、日本酒に合う和食はどれもおいしい。最後にはおなかいっぱいになったところで、「デザートはお部屋にお持ちしましょうか?」とうれしいサービス。

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部屋に戻り、満腹のままソファで休んでいたら、やってきたのがデザート「北のブラマンジェ」。いわばミルクのバケツプリンなのですが、予想以上に大きかった! 別腹とはいえ、牛なみに胃が4つほしいと真剣に思いました。

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寝心地のいいベッドで熟睡したのはいうまでもありません。

……

そして翌朝は早く起きて、朝風呂へ。早朝にはタンチョウのポーズなどを組み合わせたオリジナルの体操が体験できます。<界>ブランドのホテルでは、各地の特徴をとりいれた体操があるのだそうで、この「界 ポロト」ではタンチョウが取り入れられているのですね。

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昨夜あれだけおなかいっぱいだったのに、朝のお風呂と体操で、すっかり空腹になっていたところへ楽しみの朝ごはん。

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じゃがいものすり流し鍋に、白いご飯にあうおかずがたくさんで、朝からまたおなかいっぱい食べてしまいました……。醤油にはヤヤン昆布醤油を使うなど、地元の食材や素材もたくさん使われている和食でした。

ウポポイを訪れたあとに泊まるもよし、ウポポイを訪れる前に泊まるもよし、白老町ではウポポイと界ポロトをセットにした旅がおすすめです。

温泉や食事がすばらしいのはもちろん、ここに来たからこその体験メニューがいい思い出になりますよ。

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2019年11月 4日 (月)

世界料理学会in函館2019【食材見本市】

前回のつづきです。

二日間にわたり開催された「世界料理学会 in HAKODATE 2019」の会場になったのが、函館・五稜郭の函館芸術ホール。その向かいにある五稜郭タワーの1階では、「北海道・青森食材見本市」が行なわれました。

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もともと、道南の豊かな食材を、学会に訪れる国内外のシェフたちに紹介する見本市でしたが、やがて規模が拡大。津軽海峡をはさんで北海道~東北へとフィールドが広がり、五稜郭タワーという観光客が多く集まる場所で一般の方も自由に見学できるようになったのです。

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食材見本市とあって、豊富に獲れる魚介や、小ロット多品種の農産物、酪農品と幅広いラインナップ。

海鮮といってもとれたての新鮮な魚介をみせるだけでなく、「マルヒラ川村水産」では学会でもおなじみとなった、船上活〆神経抜きブリ「下山スペシャル」といった生産者がひと手間もふた手間もかけて旨みを引き出した魚が紹介されています。

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はこだて自由市場の「ヤマタカ高野鮮魚店」では、サケトバや干物などの加工品も。

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特に驚いたのはワイナリー「農楽蔵」のシャルドネの枝でスモークしたサバ! こういう魚屋さんが自分の近所にあったらどんなにか……。

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珍しいもので、ふぐの松前漬(森町「ジョウヤマイチ佐藤」 )。松前漬というとスルメイカですが、ふぐで作った松前漬もなかなかオツな味です。

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鹿部町「一印高田水産」の「雪たらこ」。鹿部町といえば、たらこの名産地。たらこに目のない私ですが、こちらの会社のたらこは口どけと品のいい味付けが最高でした。今年はスケソウダラもいいらしいので、新物のたらこも楽しみです。12月頃と聞いたので、忘れずに予約したい!

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味噌・醤油で有名な八雲町「服部醸造」では、未発売の商品も。この「ホタテめし」は噴火湾のホタテがごろんと入って、なんとレンジですぐにできてしまうんだそうです。「早く商品化してください」とお願いしてしまいました(笑)

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今回の学会のテーマ「きのこ」といえば、道南には二つの生産者の名前が上がります。七飯町「福田農園」の「王様しいたけ」、そして厚沢部(あっさぶ)町「渋田きのこ」の「えぞまいたけ」。えぞまいたけは白いので、炊き込みご飯や汁物に入れても色が黒くならないのが気に入ってます。

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ちなみに、前日の道南ワインアカデミー「ワインのペアリング講座」では、クセが少ないえぞまいたけはお吸い物にするとナチュラルワインに、揚げるとケルナーに、肉巻きなどにすると味付けや肉の種類によってピノ・ノワールやツヴァイゲルトレーベと合う、というお話でした。

上ノ国町「天の川・菜の花畑油工房」では、無添加・無調整生一番搾りのなたね油を実演して紹介。我が家にもある、安心安全で美味しい油です。

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「大沼ガロハーブガーデン」のはちみつは、季節によって2種類のはちみつが登場。試食させてもらうと、味も香りも全く違うので驚きました。

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七飯町「coneru」ハーブシロップは、手摘みのハーブで手作りしたシロップ。パッケージもおしゃれで、女性の方に人気を集めていました。

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せたな町・今金町の「やまの会」の富樫さんに遭遇! 「北海道生活」のチーズ特集以来、映画「そらのレストラン」公開時にお目にかかってからの再会でした。

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富樫さんの自然農法でつくられた米、味噌、醤油にトマトジュース、ソガイさんのトマトジュースやジャムも販売されており、気分は買い物モードになってしまいました。生産者と直接会えるというのも、見本市のうれしいところです。

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「奥尻ワイナリー」ではワインの試飲も。次号のワイナリー特集では、奥尻ワインの一本を撮影だけいたしまして、飲むことができなかった……つい、撮影したものと同じワインをおねだりしてしまいました(笑) 何のワインかは、次号をお楽しみに!

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ワインといえば、学会の創設メンバーのひとり、「ワインショップ和田商店」和田一明さんもちょうどいらっしゃいました。

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11月26日には北海道産ワインセミナーがあるということで、道南を代表するワインの一つ、奥尻ワインを熱心にテイスティングしておられました。

道南のお隣、青森県からも出展があり、そのうちの一軒、「梵珠フルーツわいん」では、珍しいカシスのシードルや青森産カシスとリンゴのワインを試飲。

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こういった食材の見本市というのは、札幌でも開催はしているのですが、プロ向けのもので一般の方はなかなか見られません。私たち一般からみても珍しいものがいっぱいあるのですから、一流の目利きであるシェフからすれば、宝探しのような食材見本市といえるでしょう。

今回出品された道南・東北の様々な食材や食品が、国内外から集まった食のプロの人たちに注目されて、ますます磨き上げられていきますよう願ってやみません。

というわけで、「世界料理学会 in HAKODATE 2019」で見てきたものを、ざっとご紹介してきました。しかし、これはほんの一部にしかすぎません。実際に訪れてみれば、見ること聞くこと、多彩なジャンルから深い内容まで、料理の世界がたっぷりと堪能できます。

1年半に1回の開催なので、次は2021年の春。おそらく函館の桜が楽しめるあたりでしょうか? ぜひ、次回はみなさん函館にお越しくださいね!!

(編集長)http://twitter.com/yukikoyagi/

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2019年11月 3日 (日)

世界料理学会in函館2019【2日目】

前回のつづきです。

2019年10月29日(火)「世界料理学会in函館2019」2日目

函館「炭火割烹 菊川」菊池 隆大さん
「函館発→世界を目指し日々探究」

小さい頃から、ごはんはすべて手作りで育ってきたという菊池さん。「いただきます」から「ごちそうさま」まで作法にきびしかった、だからこそ、食事のありがたさが身についていたそうです。

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人にご飯を食べさせる、思いやる気持ちが「料理人になりたい」という夢になり、それを両親に伝えたところ、連れて行かれたのが「レストラン・バスク」の深谷さん。天井からぶらさがっている生ハムの固まりを初めて見て、既製品とのちがいを思い知らされます。

昼は栄養士、夜は調理師学校へ通い、テレビ「料理の鉄人」の影響で中国料理の道を目指していた菊池さん。
「でも、ごはん、みそしる…日本人だったら日本料理をしなければ」と4年半料理旅館でつとめて、ホテルや割烹で修業するように。

厨房はフライパンなど、和食っぽくない雰囲気なのですが、でも味はしっかり和食という独特な料理を手がけています。

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きのこについては、木古内の道の駅にある「道南デス」シェフ八木橋さんのおじいさんときのこ採りに行ったとき、
「ビニール袋はだめ、きのこをかごで運んでいけば菌が落ちて次につながるからいい」と教えられたそうです。
この言葉は、学会でも何度か出されていました。

さて、八木橋さんは「道南デス」を卒業して、北斗市に店を出すそうですが、師匠の「アル・ケッチァーノ」奥田政行さんがなんとこの場で店名を発表。学会に参加している彼が、スライドで店の名前を初めて知らされるというおちゃめな展開に。

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その名も、「北斗芯軒(ほくとしんけん)」……やはり、おちゃめです。

と笑いも起きた発表ですが、最後には、「深谷さんたちの背中を見て育ってきたので、これから函館から世界を目指して生きたい」と力強い言葉で締めくくられたのでした。

東京「The Bar codename MIXOLOGY tokyo」南雲主于三さん
「Mixology Cocktail の世界と理論」

前日のワインのペアリング講座で、大越さんが「カクテル、バーテンダーの日本のレベルは、料理人と同じくらい高い」というようなことをおっしゃっており、このカクテルについての講義は興味がありました。カクテルは1940年から始まった歴史があります。

南雲さんは、カクテルの歴史から、現在の“Mixology”という新時代のカクテルまでを順を追って紹介。 

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「フォアグラ、肉、のり、トムヤムクンなど生魚以外はすべて素材になる」という南雲さん。遠心分離機、回転減圧蒸留器、超音波攪拌機などの道具も駆使して、発酵など様々な方法を使うところは、これまでの学会でも発表されてきた調理の話とリンクします。

きのこをテーマに、松茸とリンゴのカクテルも紹介されました。東京には南雲さんプロデュースのカクテルのお店が6店舗あり、ぜひ新しいカクテルの世界を体験してみたいなと思いました。

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大阪「リストランテ ポンテベッキオ」山根 大助さん
「Dステーキのメカニズムと野生のキノコ」

イタリアンのシェフである山根さんが、なぜ、ステーキ店を開いたのか。

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年とともに霜降りの肉がしんどくなってきて、赤身の肉を美味しく食べさせたいという思いからでした。ちなみに「Dステーキ」のDとは、大助のDだそうです。

有名なイタリア料理店のシェフとして、「予約取れない店に行きたい」「希少食材が食べたい」と料理をエゴイスティックに求めにきた美食家を相手にしてきて、
ほかの人たちに何を出してきたのか?もっと自分の身近な人においしいと喜ばれないと、友達でも気軽に来られるステーキ店をオープン。

繊維を肉に対して直角に切るための道具「Dカッター」や、肉を回転させながら炭で焼く「Dジラロースター」、肉にかけるあつあつのソース「ぐつぐつソース」など、赤身肉を美味しくするために考案してきた数々のアイディアが披露されました。

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肉だけでなく、今回のテーマであるきのこについても、どのように焼いたら美味しくなるかを解説。「結局、料理をデザインしている。料理とはできあがりから逆算するもの。それを、“最適調理”といっている」と山根さん。美食とは高級料理だけでなく、最高に美味しい食をプロがデザインしてくれるものなのですね。と、最後に自分自身で美味しく赤身肉を味わうようすが映し出されていました。

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ランチタイムセッション
「キノコのスペシャリストが贈る、多様なキノコの世界」

キノコといえば思いつくのは「ル・ミュゼ」石井誠さん。キノコ愛が深いシェフたちによる、石井さんコーディネートのキノコのトークセッションです。

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まずは有名な、岐阜・山県「摘草料理かたつむり」清水 滋一さん。ジビエ、きのこ、山菜と山の美食でもてなしてくだされる清水さん。「きのこは生え場が変わっていく。根こそぎ採る人がいるので、完全に出なくなることも。きのこを採る際、ばら撒くこともしなければならない。見逃すことも大事」と言い、「きのこは、木の子とかく。栄養条件、気象条件などにより、毎回出るものではない」とキノコのスペシャリストだからこその言葉を聞くことができました。

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「きのこ採りの人間が歩いた後にきのこが生える」という、長野・軽井沢「E.Bu.Ri.Ko」内堀 篤さん(写真右)も、日本菌学会に入っているほどキノコの専門家。保健所のキノコ専門家に弟子入りして10年修業したほど。毒キノコはひとつずつ覚えていくしかないそうです。

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軽井沢は冬季休業以外はキノコ料理ばかりつくっていて、栽培種で30種、天然ものは意図的に抑えて60~70種くらいに絞っているそうです。そうじゃないとお客様が引いてしまうので……と笑っていた内堀さん。キノコの話になると止まらないほど、キノコ愛にあふれていました。

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同じくキノコ愛の強い石井さんも、今回の学会のテーマがキノコであることにふれ、「キノコというと地味に思われるかもしれないけど、世界一高いのは白トリュフ、日本一高いのはマツタケ、香りのすばらしさも含めて、きのこにもっと興味を持ってほしい」とおっしゃっていました。

東京「麻布長江 香福筳」田村亮介さん
「中国料理と干し椎茸」

日本では松茸、フランスではトリュフ、イタリア料理ではポルチーニ、と学会では高級なキノコの名前が挙げられましたが、中国料理では干し椎茸など乾物にすることによって高級食材となるものの話がありました。

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中国料理では、乾物を「乾貨」と呼び、まさに価値の高いものとされてきました。それは、
①保存性 ②輸送性 ③生とは異なるおいしさ ④太陽のエネルギーを体内に取り込む
という理由からで、新鮮なものを使うより、あえて乾物を使う意味があるそうです。

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中国で「椎茸」は干し椎茸のことをさし、5度くらいの水で冷蔵庫で12時間かけて戻したあと、2品のレシピを公開。

「細切豆腐の精進スープ」は玉露や昆布を加えて旨みだけを引き出した一品。「日本全国の乾物を追求していきたい」と田村さん。確かに北海道では、干したキノコや、干し野菜のほかに、昆布やナマコなど乾燥した高級食材もありますね。キノコのもう一つの魅力を教えられたひとときでした。

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「菌と金の知っておきたいあれこれ…。」
東京「TAKAZAWA」高澤 義明さん

学会の常連であり、見た目はかなりストイックでかっこいい高澤さん、CMでご覧になった方も多いでしょう。

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しかし、学会での高澤さんは、歌をうたったりなかなか面白い一面を見せてくれます。

最初はキノコのお題どおり、あの「オーパスワン」でのイベントで作ったアメリカの松茸(その名もPINE ENVY)の料理のことや、北海道で生まれた「とかちマッシュ」からヨーロッパでは「カエサルキノコ」と呼ばれて珍重されているタマゴダケまで、様々なキノコの解説をされていました。

「きのこはトレジャーハンティング。だんだん見えるようになるり、見聞を広げるのが楽しいプロ向きの食材。まずはプロと山に入り、客に出す前に食べるのが鉄則」と高澤さん。

途中から、「菌より金」というキーワードで雰囲気ががらりと変わり、高澤さんは退場。変わりに、多金澤先生なるキャラクターが現われます。

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「料理人は(ホテルなどに勤めている人を除き)退職金ももらえない! どれだけがんばっても自分の価値は銀行が決められてしまう!金も貸してくれない!」と叫ぶ多金澤先生。

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資産運用のこと、助成金について知識を増やす、などのお話は、確かにこういうことに疎い方には参考になる部分もあって、学会にこういう話があってもいいなと笑いながらも感心させられました。

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宇都宮「オトワレストラン」音羽 和紀さん ・ 音羽 元さん ・ 音羽 創さん
「地方のフランス料理店を継承すること」

宮城「シェ・ヌー」赤間喜久さんの紹介でご登壇した音羽さん一家。

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まずは、音羽元さんの修業時代から今日までの歴史をビデオで紹介。

つづいて、二人の息子さんのお話になります。「長男だから継ぐという漠然とした意味で料理人になった」という元(はじめ) さんは、赤間さんのレストランや、父と同じくフランス「アラン・シャペル」で修業。父の店を継いで行くことについては、「兄弟それぞれの性格に合わせて得意分野でやっていけたらいいと思う」と元さん。

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次男の創(そう)さんは料理と無縁で自由にしていたそうですが、兄の姿を見て「すごいな」と思うようになったそうです。今では東京のレストランの料理長として働いていますが、「自分の成長とスタッフの成長、思うようにできない。初歩的なことを感じながらやってる」と言うことで、休みのときは父と兄のいるレストランに行ってサービスをやってみるそうです。

「最終的にお店全体、系列がうまくいくにはサービスしかないと思うようになった。家族でベストな方向へ行くように力をつけていきたい」と創さん。

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最後に和紀さんが父親として「お店作りは大変、一人でできることは何もない。子供たちにがんばってもらうには、めざすところ、ビジョンが同じでないといけない。そうでないとけんかになる、感情論になる。家族とこの土地に根付いていけたら」と締めくくられていました。

地方のレストランにありがちな課題も、こうした家族経営だからこそのメリットも感じられました。

山形・鶴岡「アル・ケッチァーノ」奥田 政行さん
「日本の自然のきのこを使うコツ」

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世界を股にかけた有名シェフでありl、学会の常連であり、いつも会場を爆笑に巻き込む奥田さん。むしろ「学会によって成長できた」と数ある例をたたみかけるように面白おかしく解説します。

前回の学会のテーマは山菜でしたが、この山菜の味覚の研究がワインの味覚表につながり、ペアリングの表でお金がもらえるようになった→お米とおかずの味付けにも使えるようになった→鶴岡に食材の研究をしにくるように、海外からミシュランのシェフたちがやってくるようになったそうです。

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きのこについては、複数のきのこを合わせると旨みがアップする、5種類あわせるとおいしくなると持論を展開。5種の中に1種いい香りのものを入れるとよく、和食にあうので、和の技法でイタリアンをつくるそうです。

この5種類あわせると、とたんにおいしくなるという考えは、学会が5人の人たちで始まって、今や大きな会に育ってきたことを例に挙げ、深谷さんを黄門様になぞらえたにぎやかなコラージュ画像が出されました。ほかにも爆笑画像がたくさん出たのですが、紹介しきれず、このへんにしておきます(笑)。

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「石川県のきのこ事情ときのこの旨味について」
金沢「日本料理・銭屋」高木 慎一朗さん・「レスピラシオン」梅 達郎さん・八木恵介さん

老舗料理店「銭屋」の二代目であり、海外で活躍する一方、学会の常連としてすっかりおなじみの高木さん。今回のテーマを金沢の若手にゆだねようと考えたところ、途中で、きのこの依頼をジビエとまちがえてしまい、「レスピラシオン」の梅さんと八木さんに依頼してしまいます。

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ところが、依頼されてしまった梅さんたちは、まじめにキノコについて発表せねばと悩んだ挙句、石川県で最もキノコに詳しいとされる農林総合研究センターの八島さんに相談することに。石川県では約30種のきのこが食べられている一方で、ホウキタケとういキノコについては毒があるけど食べる、道の駅にも売ってるという事実に行き当たります。

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そこで、二人は毒キノコを塩漬けにして一年で毒を抜く実験をします。

これは高木さんが以前の学会で発表した「石川県にはふぐの卵巣の糠漬けがある」ということにもつながります。
毒キノコというと、食べないというこれまでの考えをくつがえす発想ができたのも、猛毒のふぐの卵巣を毒を抜いて糠漬けにするという石川県の郷土食があってこそ。

「科学者と組んで毒キノコの毒を抜く方法も見つけたらいいのではないか」という考え方が最後に出たのも、キノコに詳しくなかった若手シェフが考え抜いた結果としてとても興味深いものになりました。

 

【まとめ】
深谷さん・間さん・奥田さん

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いよいよ学会も終わりになり、第1回から参加してきた3人がまとめの対談をされました。

深谷さんは「(回を重ねるごとに)かなり自由になりすぎてきた。幅が広がるのはいいけど、料理人のための料理学会なのである程度枠があったほうがいい。そうして(キノコをテーマに)頼んだら、いろいろ持ってきてくれた。金沢の若い人たちもいろいろ調べてくれた」と喜んでいました。

間さんも同様に、「原点回帰もいいといっていたので楽しかった。珍しく題材のきのこを守っていた人が多かった」とふりかえります。

「1回目はいい時代だった。どんどん西洋的になったけど、東洋的になってきた。東洋の文化は目に見えないものを掘り下げる。けっこう深く入っていけた」と奥田さん。

ここで、深谷さんは次々と料理人を壇上に上げていきます。「1回目は他業界の方も登壇していて、経済学者が発表したこともあった。今回も進化して新しい発表になっていた。高沢さんも、お金の話ができるようになったね」と言うと、「10年でつぶれる店が多い。今回はちがうステージに上がって共有したくなってきた」と高澤さん。菌の話から金の話になったのはそういう理由だったのですね。

そうして、話しながら順にシェフたちを壇上に上げていく深谷さん。最後には「全員あがってください!」とシェフ全員をステージに呼びます。

「世界料理学会は、第1回から料理人の、料理人による、料理人のための学会と始まってきた。登壇していなくても、僕もコック服着てくるから壇上上がりたいといってた人もあがってOK.料理人はみな同じ人間です!」とたくさんの料理人に呼びかける深谷さん。この人間力が、10年で大きな力になっていることに感動しました。

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毎回大変な思いをして準備して、問題が山積みであっても、こうして多くのシェフたちが集まる世界料理学会。今回は「つづけていくこと」と「若い世代」もテーマになっていましたが、少なくともこの場に集まった若いシェフの姿に、日本の料理の未来も決して絶望ずるものではないな、と思った10年目の学会でした。

さて、この日に同時開催していた、もう一つのイベント「食材見本市」へつづく。

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2019年11月 2日 (土)

世界料理学会in函館2019【1日目】

2019年10月28日、「世界料理学会in函館2019」が開催されました。

「料理人の、料理人による、料理人のための学会」という料理学会も今年で10年目。私自身も「北海道生活」の取材で見守り続けて、10年という月日がたったのだなあと感慨深いです。

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国内外から多くの料理人が集うこの学会、函館「レストラン・バスク」オーナーシェフの深谷宏治さん。若き頃、スペインのサン・セバスチャンで修業時代に見てきた料理人たちの活動が、この学会の源流になっています。そして、サン・セバスチャンもまた、世界で有名な「美食の街」になりました。

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「料理人は、街を変えることができる」と料理学会を提唱した深谷シェフに、函館の料理人や食に関係する方々が賛同して実現し、北海道内はもとより、国内や海外からも名だたる料理人たちが集まるようになりました。(シェフという呼び名は、以下省略で失礼いたします。みなさんシェフだらけなので…さん付けにします)

立ち上げた仲間「ガストロノミーバリアドス」の一人、七飯町でパン屋さんを営む「ヒュッテ」の親方こと木村幹雄さん。司会者としても、深谷さんをはじめ個性豊かな登壇者のみなさんをまとめあげる技はさすがです。

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この学会は、料理人の方々はもちろん、食に関心のある方なら一般でも参加でき、私のように知識の乏しい者でも楽しめます。そこで、順を追って、レポートしていきます。

話自体はもっとたっぷりなのですが、字数も限りがあり、かなり一足飛びのご紹介になりますこと、ご了承ください。

東京「ル・マンジュ・トゥー」谷 昇さん & 大阪「ミチノ・ル・トゥールビヨン」道野 正さん
「料理人という生き方」

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神楽坂の美味しいビストロとして、私も20年以上前に時々通っていた「ル・マンジュ・トゥー」。今や予約必須の有名店になったこのお店のオーナーシェフ、谷さんは学会の常連となり、まさかこうして函館でお目にかかれるようになるとは思っておりませんでした。

毎回、学会は谷さんの「時事放談」のようなトークで始まるのがならわしのようになっています。今回のお話も、谷さん&道野さんといいますか、谷さんvs道野さんといいますか、丁々発止のやり取りを楽しく聞かせていただきました。

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谷さんは、「学会が料理は学問になりえてるのか? 美食学とはなんぞやと常々思っている。おいしいという主観しかない客やメディアに気を使っている料理人が増えている。しかし時代によって評価は変わる。次の時代に、今後どう伝えていいたらいいのか難しい」という話をされました。

ベテランになったシェフとして、次の若い世代へと継承する難しさ。10年もつづくと、現在の話だけではなく将来へ、継承していくことがテーマとなる話は、この後の何人かのシェフの話も共通して出てきます。

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道野さんは「どう伝えるべきか」の問いに、「言葉で伝えるのは難しい。だから、自分がやってみせるしかない」という答えが、一貫していらっしゃいました。神戸の震災で感じたことをきっかけに、「自分のできることをひたすら続けるしかない。誰かにどう伝えようとかわかってもらおうとか、もう思っていない」という考えにたどりついたそうです。

道野さんは同志社大学の神学部出身。「神学部」というと私は同じ大学にいたのでピンときましたが、同志社はミッション系の大学なのでキリスト教に関する学科があるのです。神学部出身のシェフというのは異色だなあと思っていたら、意外なきっかけでシェフになられたという話が面白かった。それでも、神学にふれられていた経験からか、お話の中に悟りみたいなものを感じられました。

パリ「Passage 53」佐藤 伸一さん
「今」

札幌「ル・ミュゼ」石井誠さんとのQ&A方式で、まるで公開インタビューをみているような感じのお話。前の谷さんの話が長引いて、尺が足りなくなるのも前の時と同じでほほえましかったです。

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石井さんが「パリでの20年はどうだったか」と聞かれると、「グランドホテルを出て、石井シェフとエノテカで働き、パリに出たのが2000年の時。当時は厨房で殴る蹴るは当たり前、安く使えるジャポネ(日本人)としてこきつかわれていた。いまでは、日本人シェフというだけでほしがるし、待遇がいい。どのレストランでもスーシェフは日本人になった」と、フランスにおける日本人シェフの扱いの変化についても話されていました。

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佐藤さんはパリで2009年に「PASSAGE53」をオープンし、ミシュラン一つ星、二つ星、と快挙をつづけてきましたが、「そろそろ違うところでやってみたい」と新しい店の準備をしているそうです。「北海道で生まれたこと、母がつくってくれた料理、その環境を含めてのベースがある」と「心からおいしいと思える料理を食べて、その影響を受けてシンプルに料理を作りたい」という佐藤さん。

先ほどの谷さんのお話で、若い人がなかなか続かないという悩みが出されていましたが、「この10年でスタッフ300人は辞めてる。あきらめるって、人生を辞めることと同じ。心が折れることなんて考えられない」。シェフもアスリートと同様に、メンタルが強くないと成功できないものだと思いました。

【トークセッション】
こんな料理をつくりたい~若手シェフたちのトーク」

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今回の学会では、次世代を担う若いシェフたちのお話も聞くことができました。

このトークセッションでは、学会の初めの頃は若手といわれていた東京「山田チカラ」の山田さんが、今やベテラン側に。3人の若いシェフからお話を引き出しています。

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富山・魚津「hamadaya LABO」濱多雄太さんは、父親を料理人に持ち、ゆくゆくは継ぐことを考えているそうです。「魚津市は人口一人あたりに対する店舗数が全国2位なのに、食べ歩く人が少なくなった」といいます。漁師町で外で食事する習慣が昔はあった。函館、サンセバスチャン、と美食の街を目指してきた漁師町の話は聞いてきましたが、魚津という街も漁師町ならではの課題があるようでした。

子供が食べなくなったタラの干物をアレンジしたり、利き酒師でもあるので料理に合う酒の提案をしている濱多さん。これからも生産者のみならず、干物など二次産品をつくる人と協力したいと語っていました

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東京で次のステージに向かい「新しい料理人の働き方の創造」に取り組んでいるという薬師神 隆さんと、大阪「アニエルドール」j藤田 晃成さん

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薬師神さんは愛媛県出身、「RED U-35」という若手料理人発掘のコンペティションで「ふるさと」をテーマにした料理に取り組んだ際に、「愛媛の特産はみかんだけじゃなく、ひらめ、キュウリ、青いトマトなどがあった。田舎の食材の知らなさを痛感し、日本の食材のことを勉強しようと思うようになった」とのこと。

大阪の藤田晃成さんも、大都会にいて地元食材という考えがかえって難しいと思う中でも、「湯葉など日本にしかない材料でつくりたい。フランスで働いていたときはフランスの食材でつくっていたし、ノルマンディー、バスク、リヨンなどの地方で郷土料理が好きだった」と、日本特有のもの、味噌やフグなど積極的に取り入れて行こうと思ったそうです。

その一方で、「若い者がつづかない。14席を6人でやってて、朝8時半から夜10時半くらい。労働環境をととのえていく必要がある」と、これまでのベテラン先輩シェフだけでなく、若手の料理人の間でも同様な悩みがあるとおっしゃっていました。

若手、といっても悩みには共通のものがあり、また、意識の高い料理人は「今時の若いやつ」ではない仕事に向き合う覚悟が感じられ、頼もしく感じました。

【スペイン・サンセバスチャンからのゲスト】
「バスクのキノコ、伝統料理と現在」
「ルイス・イリサール料理学校」講師 Federico Pacha さん

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地元の食材で手作りで料理を作ることを大切にしているというフェデリコさん。

料理には五味=5つの味覚があるといわれていますが、「6番目もある」と持論を展開。
「甘み・酸味・塩味・苦味・旨み」+「誠実さ」
つまり、「質がよく衛生的で公正な食べ物の味」が欠かせないとスローフードの考えを伝えていました。

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続いて、バスク地方について、そしてサン・セバスチャンという街について説明があり、今や日本でもすっかりおなじみとなったバルや、ピンチョス(つまみ)とソシエダ(美食クラブ)という独自の食文化について解説。

そしてバスク地方のきのこについて。料理学会は毎回テーマが決まっているのですが、今回は「自然のきのこ」がテーマです。

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イベリア半島ではカタルーニャをのぞき、きのこを食べる習慣はなかった。スピリチャルなもの、魔女の集会の場所と考えられていた。しかしバスクでは昔から身近な存在だったきのこ。すべての村にきのこ同好会があるそうで、収穫したきのこを分類し、毒性のものなど違いを教えるようにしているそうです。

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ここで、「ソシエダ」でつくられているキノコの伝統料理のレシピを紹介。この料理人によるレシピ公開も、サンセバスチャンが美食の街として発展してきた一因。企業秘密、背中を見ろ、とは言わず、美味しい料理のレシピを共有することで店のレベルを互いに上げていったのです。

バスク料理はシンプルで素材が重要。きのこのソテーに黄身をおとしたものということで、真似したくなった一品がありました。

東京「TERAKOYA」間 光男さん
「STYLE(様式)とINNOVATION(技術革新)」

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「ケミカルアプローチなど、どういうかたち、環境、雰囲気で味わってもらうかを考えている」という間さん。「エル・ブジ」の分子料理に影響を受け、エスプーマを持っていなかった時代、いろいろと実験して行く中で少しずつテクニックが増え、パートナーが増え、テクスチャーも増えて行ったそうです。

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「どんな食べさせ方がどう喜んでもらえるか、笑ってもらえるか、環境をととのえることを考えるようになった」と間さんが様々な業種の方と協力したものは、料理だけでなく、それを盛り付けるうつわまで。

光るお皿や、お箸を進化させた新しいカトラリーなど、料理は見方や考え方によって科学や化学にもなり、進化するのだと、勉強になりました。

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北海道・美瑛「バローレ」 才田 誠さん
「この地で表現することの自由さ不自由さ」

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美瑛「百姓や」とつながる「バローレ」細田さんの、生産者との信頼関係を築いている姿は弊誌「北海道生活」で紹介させていただきましたが、「ル・ミュゼ」石井さんに「鎖国の料理人」といわれるほど美瑛から出ないという才田さんのお話。

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「まだまだ美瑛には知らないことがいっぱいあるし、毎日見る景色も同じ景色がない。どんな場所にも変えがたい特別な場所であり、エネルギーをもらえる環境がある」と才田さん。この地を表現することを考え、例えばこの落葉(ラクヨウ)キノコを大根と華やかに盛り付けた一皿は、食材の背景を盛れる強みが出せるといいます。

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アイヌの人に「シケレペ」(ひしの実)など知らなかった素材を教えてもらったり、奥様が狩猟免許をとってジビエ料理を提供できるようになったり、と、地元料理のさらなる表現のために、常に努力を続けているそうです。

【道南ワインアカデミー】
道産ワインと食材のペアリングセミナー
東京「AnDi」 ワインテイスター ソムリエ 大越 基裕さん

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別会場で行なわれていたのが、今年発足した「道南ワインアカデミー」のペアリングセミナー。道南には、「はこだてワイン」や「おとべワイン(富岡ワイナリー)」に加え、「農楽蔵(のらくら)」が話題となったり、今年のニュースではフランスの「モンティーユ」や大手企業が参入するなど、あらたなワイン産地として盛り上げていく気運があります。

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実は「北海道生活」次号で、新しいワイナリーやペアリング(ワインと料理のマッチング)について特集をしているので、大変勉強になりました。

こうした有識者の方にお話を伺えるのも、ひいては人脈。「農楽蔵」の佐々木さんとフランスでともに修業していた大越さんの知識や経験は、北海道のワインの世界にも大きな戦力となっていきそうな気がします。

7時間にわたる1日目の学会、今年はパーティがなく、夜も西部地区へと場所を移して新しい催しも行なわれたそうです。大いに学び、大いに語らう、料理人たちの熱意あふれる時間は、夜を徹して翌日までつづきます。

2日目へつづく。

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2019年1月16日 (水)

アイヌ料理教室開催のお知らせ

「北海道生活」の連載でご紹介したことのある楢木貴美子さんが講師を勤めるアイヌ料理教室が開催されます 

●日にち:2月13日(水)

●時間:10:30~13:30

●申込締切:1月18日(金)必着

●会場:札幌市男女共同参画センター4F 料理実習室

  (札幌市北区北8条西3 札幌エルプラザ内)

●対象:18歳以上の方 各コース20人

●料金:無料

申し込み方法は電話かEメールが便利そうです

 011-211-2277(土日除く 8:45~17:15)

 ainushisaku@city.sapporo.jp  (24時間受付)

応募多数の場合は抽選となります

アイヌ民族の自然と一体になった暮らしや自然に根ざした伝統的な文化について、わかりやすい体験交流を通じて理解を深めることができますよ

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2018年10月 6日 (土)

明日OPEN! 札幌市民交流プラザ in さっぽろ創世スクエア

札幌に新しく誕生したランドマーク「さっぽろ創世スクエア」に、いよいよ明日、「札幌市民交流プラザ」がオープン!

ということで、先日、下見に行ってまいりました


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吹き抜けの空間には、札幌市の10区をイメージしたオブジェが浮かびます。


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1階のホールは、S字型のベンチやテーブル席のある憩いの場。


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1階から2階へとつづく「札幌市図書・情報館」は、単なる図書館ではありません。


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カフェ風のゆったり空間、というだけでなく、ここは情報を得たり、相談したり、お仕事したり、といろんなことができます。

詳しくはコチラ→ https://www.sapporo-community-plaza.jp/library_concept.html

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いわゆる小説や絵本などはなく、仕事や暮らしにかかわる蔵書をたくさん取り揃えています。もちろん、「北海道生活」など北海道で発行されている雑誌もありますよ。

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席は事前にネットで予約することができるので便利です。

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ここで情報交換や交流ができるということで、図書館らしくない画期的なところは、しゃべっていいんです!

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グループエリアはちょっとしたコワーキングスペースに。打ち合わせしたり、こんなことをやりたいと相談したり、とさまざまに使えます。

その奥にあるのが、ここで唯一しゃべってはいけないリーディング席。静かに読書を楽しむことができます。

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小さな教会を目の前に、読書にふけるのもいいですね。席数も少ないので、かなり人気を集めそうです。

この隣にあるのが、札幌文化芸術交流センター「SCARTS」

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スタジオや教室など、アートや音楽などが楽しめて学べる場です。防音のレッスン場や、グループワークとかカルチャースクールにも使えるスペースなど、さまざまな空間が用意されています。

コンサートや美術展などの情報も集まっていますので、興味のある方はぜひ!

詳しくはコチラ→ https://www.sapporo-community-plaza.jp/scarts_about.html

そして4階からは、この市民交流プラザの目玉として以前から注目されていた

札幌文化芸術劇場「hiraru(ヒタル)」 へ、。

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オペラハウスのような壮大なホール。明日のこけらおとしもオペラ「アイーダ」です!

詳しくはコチラ→ https://www.sapporo-community-plaza.jp/theater.html

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音響や証明もかなり凝ったものとなっております。

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この舞台に合うステージってどんなものだろう、とふと考えてしまいました。お気に入りのアーチストがここに来てくれたらいいなあと思うファンもいるかもしれませんね。

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ほかにも、レストランやカフェがオープンするそうなので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

札幌市民交流プラザ」は、10月7日(日)11時にグランドオープンです!お楽しみに~

(編集長)http://twitter.com/yukikoyagi/

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2018年2月 6日 (火)

渡辺肇之さん写真展 @旭川

旭川市中央図書館の2階ミニギャラリーにて、旭川在住のカメラマン渡辺肇之さんの写真展を開催中です。

渡辺さんといえば、燻製をつくるのと、プリンをつくるのがめちゃくちゃ上手な、ちょっとだけ卓球選手の張本君に似ていることが私の中で噂のカメラマンさんです。

ふだんは取材や広告用の写真でリクエスト通り、いやそれ以上の写真を撮ってくれるんですが、ライフワークの写真はそうした写真とは一味ちがって、とってもポエティックな内面が垣間見られます

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~27日(火)までですのでお近くの方はぜひお立ち寄りください。

心が静かに洗われていくような...素敵なひとときが過ごせるはずです(^^)

会場 旭川市中央図書館2階ミニギャラリー...
会期 2/1(木)~27(火)
休館日 2月5.12.19.26の各月曜
開催時間 火曜~金曜9:30~19:00、
     土・日・祝9:30~18:00
主催 旭川中央図書館

(kana)

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2017年8月 4日 (金)

札幌の夏の楽しみ。

…あついですね

札幌も一昨年より昨年、昨年より今年とだんだん夏の暑さが増している気がします。

さて短い札幌の夏の楽しみといえばいろいろありますが、先日は昨年に引き続き、皆さんですすきのまつりに繰り出しました。

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要はサッポロの夏はやっぱりビアガーデンってことなんですが、この日はうっかりビール等を写すのを忘れてしまいました

またサッポロ・シティ・ジャズという、街中でジャズやるイベントもありまして、弊社から徒歩3分のクロスホテルさんでも昼と夜、各30分、注目のアーティストがミニライブをやってます。

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このときはちょっと暑すぎでしたが。

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ジュースの氷があっという間にとけてきます。

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FM NORTH WAVE にも番組もっているシンガーソングライターの澤田かおりさん。(スチール撮影OKということで撮らせていただきました(^^))

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CROSS DINERのおサレなワゴンで販売しているメニューもとても美味しいです。

テラスでご飯食べながら30分ライブを楽しみ、お昼休み一時間あれば余裕で戻ってこられるという、なかなか素敵なライブシリーズです♪

札幌の夏は短いですが、楽しみがたくさんあります(^^)

(kana)

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