「第10回世界料理学会 in HAKODATE」レポート【スピンオフその2】
「第10回世界料理学会」2日目のランチタイム、空いている時間と壇上の空間を惜しまず使う、トークセッションが行なわれました。
もちろん私もランチそっちのけで参加!
まずは、北海道大学水産科学研究院・水産学部 高津哲也先生による講義「気候変動と漁獲量の関係」。
ここ数年、北海道を代表する魚介がなかなか獲れていません。サンマ、サケ(とイクラ)、ウニ、イカ……「地球温暖化」だからと片付けてしまわれがちでしたが、海と生物、気候変動の解説を聞くとそんな簡単な話ではありませんでした。
とどのつまりは「人」、漁師の人材不足や後継者不足など、生産者側の課題を解決することが先決なのだそうです。大漁の際には態勢を整えるなど「乱獲を防ぐ取組がまず大事」と高津先生。
農業では畑に種をまくように、漁業でも海に種をまき、生産量をあげていくのは地道な努力ですが、自然の恵みをいただく人の使命ともいえるでしょう。
この話を受けて、料理人4人も登壇してのトークセッション「料理人の目からみた漁業資源」に移ります。
司会は金沢の老舗料亭「日本料理 銭屋」高木慎一朗さん。海の話だったのがいきなり、アメリカで絶滅したオオカミを蘇らせて森の環境を回復しているという話から始めました。北海道でも開拓でオオカミが絶滅、森の生態系が変わり、エゾシカが増えすぎて森を枯らしていることが問題になっていて他人事ではないと思い知らされました。海も陸も、人が入ったことで生物の数が影響を受けているのです。
料理人にとっては地域の魚種が変わるのは大変なこと。たとえば北海道でもブリがとれすぎて、ブリをふだん食べない北海道では困っているとか、いろんな問題があります。
石川県でも能登でマグロが出てニュースになったとか。
とれてほしいものがとれないという悩みはどの地域にもあるのではないでしょうか、と高木さん。
「ロレオール田野畑」の伊藤シェフは「とれなきゃ、使わなければいいだけ。あるものを使えばいい」と持論を展開。
近くにあるものを余さず使うという信念、そのアレンジ力こそ料理人の技といえます。
一方で、高木さんとしては「日本料理では決まった食材でつくるものもあり、なかなか難しい」と料理ジャンルや内容によっても状況がちがうお話がありました。
山形「アルケッチアーノ」奥田シェフも、近くにある食材を使い、とれすぎて困っているものもどんどん引き受けるといいます。
限度を決めずに受け入れ、系列店にもまわし、最近では寿司店もオープンしているので海産物でも引き受けているとのこと。複数店舗を経営している奥田さんだからこそできる方法でもありますが、けっきょくは循環して店の得にもなっている、と奥田さん。
その後、奥田さんの持論は止まらず……いつも通りの奥田ワールドに。
奥田シェフが変なことばっかり言うので(笑)、その後ではきっとやりにくかったでしょう、三重「ボンヴィヴァン」河瀬毅シェフ。1日目の樋口さんのお話にもありましたが、三重は海女の数日本一、でありながら数も年々減っています。伊勢を代表するアワビが6割減という深刻な事態もあり、獲るだけでなく育てるということの大切さは料理人からも実感しているとのこと。
その後、食品ロスとは、人材不足について、など料理人の目から見た様々な問題について各シェフのトークセッションは続きました。
締めくくりとして、高津先生から「いい食材は現地でほめてクチコミをしてほしい」と料理人のみなさんへのメッセージ。奥田シェフも「生産者にメガホンを付けるのが料理人」とおっしゃっていたように、各地で獲れなくて困るものもある一方で、獲れていても見向きもされないもの、獲れすぎて困るものもあります。
すべては海で生きるものの大切な命。私たちもふだん食べなれているものだけでなく、高いとか安いとかで一喜一憂せずに様々な食材をおいしくいただく意識が必要だなと感じました。
料理学会といっても、料理人の他に、生産者や、学者の方々、いろんな食にかかわるプロのお話は多岐にわたり参考になります。私一人のちっぽけな体験ではおさまりきれないので、たくさんの人たちにこの学会に来てほしいとあらためて思いました!
みなさん、食にかかわる仕事でないという方もぜひ、一度見に来てみてくださいね。
(編集長)
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