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2019年11月 2日 (土)

世界料理学会in函館2019【1日目】

2019年10月28日、「世界料理学会in函館2019」が開催されました。

「料理人の、料理人による、料理人のための学会」という料理学会も今年で10年目。私自身も「北海道生活」の取材で見守り続けて、10年という月日がたったのだなあと感慨深いです。

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国内外から多くの料理人が集うこの学会、函館「レストラン・バスク」オーナーシェフの深谷宏治さん。若き頃、スペインのサン・セバスチャンで修業時代に見てきた料理人たちの活動が、この学会の源流になっています。そして、サン・セバスチャンもまた、世界で有名な「美食の街」になりました。

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「料理人は、街を変えることができる」と料理学会を提唱した深谷シェフに、函館の料理人や食に関係する方々が賛同して実現し、北海道内はもとより、国内や海外からも名だたる料理人たちが集まるようになりました。(シェフという呼び名は、以下省略で失礼いたします。みなさんシェフだらけなので…さん付けにします)

立ち上げた仲間「ガストロノミーバリアドス」の一人、七飯町でパン屋さんを営む「ヒュッテ」の親方こと木村幹雄さん。司会者としても、深谷さんをはじめ個性豊かな登壇者のみなさんをまとめあげる技はさすがです。

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この学会は、料理人の方々はもちろん、食に関心のある方なら一般でも参加でき、私のように知識の乏しい者でも楽しめます。そこで、順を追って、レポートしていきます。

話自体はもっとたっぷりなのですが、字数も限りがあり、かなり一足飛びのご紹介になりますこと、ご了承ください。

東京「ル・マンジュ・トゥー」谷 昇さん & 大阪「ミチノ・ル・トゥールビヨン」道野 正さん
「料理人という生き方」

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神楽坂の美味しいビストロとして、私も20年以上前に時々通っていた「ル・マンジュ・トゥー」。今や予約必須の有名店になったこのお店のオーナーシェフ、谷さんは学会の常連となり、まさかこうして函館でお目にかかれるようになるとは思っておりませんでした。

毎回、学会は谷さんの「時事放談」のようなトークで始まるのがならわしのようになっています。今回のお話も、谷さん&道野さんといいますか、谷さんvs道野さんといいますか、丁々発止のやり取りを楽しく聞かせていただきました。

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谷さんは、「学会が料理は学問になりえてるのか? 美食学とはなんぞやと常々思っている。おいしいという主観しかない客やメディアに気を使っている料理人が増えている。しかし時代によって評価は変わる。次の時代に、今後どう伝えていいたらいいのか難しい」という話をされました。

ベテランになったシェフとして、次の若い世代へと継承する難しさ。10年もつづくと、現在の話だけではなく将来へ、継承していくことがテーマとなる話は、この後の何人かのシェフの話も共通して出てきます。

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道野さんは「どう伝えるべきか」の問いに、「言葉で伝えるのは難しい。だから、自分がやってみせるしかない」という答えが、一貫していらっしゃいました。神戸の震災で感じたことをきっかけに、「自分のできることをひたすら続けるしかない。誰かにどう伝えようとかわかってもらおうとか、もう思っていない」という考えにたどりついたそうです。

道野さんは同志社大学の神学部出身。「神学部」というと私は同じ大学にいたのでピンときましたが、同志社はミッション系の大学なのでキリスト教に関する学科があるのです。神学部出身のシェフというのは異色だなあと思っていたら、意外なきっかけでシェフになられたという話が面白かった。それでも、神学にふれられていた経験からか、お話の中に悟りみたいなものを感じられました。

パリ「Passage 53」佐藤 伸一さん
「今」

札幌「ル・ミュゼ」石井誠さんとのQ&A方式で、まるで公開インタビューをみているような感じのお話。前の谷さんの話が長引いて、尺が足りなくなるのも前の時と同じでほほえましかったです。

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石井さんが「パリでの20年はどうだったか」と聞かれると、「グランドホテルを出て、石井シェフとエノテカで働き、パリに出たのが2000年の時。当時は厨房で殴る蹴るは当たり前、安く使えるジャポネ(日本人)としてこきつかわれていた。いまでは、日本人シェフというだけでほしがるし、待遇がいい。どのレストランでもスーシェフは日本人になった」と、フランスにおける日本人シェフの扱いの変化についても話されていました。

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佐藤さんはパリで2009年に「PASSAGE53」をオープンし、ミシュラン一つ星、二つ星、と快挙をつづけてきましたが、「そろそろ違うところでやってみたい」と新しい店の準備をしているそうです。「北海道で生まれたこと、母がつくってくれた料理、その環境を含めてのベースがある」と「心からおいしいと思える料理を食べて、その影響を受けてシンプルに料理を作りたい」という佐藤さん。

先ほどの谷さんのお話で、若い人がなかなか続かないという悩みが出されていましたが、「この10年でスタッフ300人は辞めてる。あきらめるって、人生を辞めることと同じ。心が折れることなんて考えられない」。シェフもアスリートと同様に、メンタルが強くないと成功できないものだと思いました。

【トークセッション】
こんな料理をつくりたい~若手シェフたちのトーク」

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今回の学会では、次世代を担う若いシェフたちのお話も聞くことができました。

このトークセッションでは、学会の初めの頃は若手といわれていた東京「山田チカラ」の山田さんが、今やベテラン側に。3人の若いシェフからお話を引き出しています。

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富山・魚津「hamadaya LABO」濱多雄太さんは、父親を料理人に持ち、ゆくゆくは継ぐことを考えているそうです。「魚津市は人口一人あたりに対する店舗数が全国2位なのに、食べ歩く人が少なくなった」といいます。漁師町で外で食事する習慣が昔はあった。函館、サンセバスチャン、と美食の街を目指してきた漁師町の話は聞いてきましたが、魚津という街も漁師町ならではの課題があるようでした。

子供が食べなくなったタラの干物をアレンジしたり、利き酒師でもあるので料理に合う酒の提案をしている濱多さん。これからも生産者のみならず、干物など二次産品をつくる人と協力したいと語っていました

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東京で次のステージに向かい「新しい料理人の働き方の創造」に取り組んでいるという薬師神 隆さんと、大阪「アニエルドール」j藤田 晃成さん

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薬師神さんは愛媛県出身、「RED U-35」という若手料理人発掘のコンペティションで「ふるさと」をテーマにした料理に取り組んだ際に、「愛媛の特産はみかんだけじゃなく、ひらめ、キュウリ、青いトマトなどがあった。田舎の食材の知らなさを痛感し、日本の食材のことを勉強しようと思うようになった」とのこと。

大阪の藤田晃成さんも、大都会にいて地元食材という考えがかえって難しいと思う中でも、「湯葉など日本にしかない材料でつくりたい。フランスで働いていたときはフランスの食材でつくっていたし、ノルマンディー、バスク、リヨンなどの地方で郷土料理が好きだった」と、日本特有のもの、味噌やフグなど積極的に取り入れて行こうと思ったそうです。

その一方で、「若い者がつづかない。14席を6人でやってて、朝8時半から夜10時半くらい。労働環境をととのえていく必要がある」と、これまでのベテラン先輩シェフだけでなく、若手の料理人の間でも同様な悩みがあるとおっしゃっていました。

若手、といっても悩みには共通のものがあり、また、意識の高い料理人は「今時の若いやつ」ではない仕事に向き合う覚悟が感じられ、頼もしく感じました。

【スペイン・サンセバスチャンからのゲスト】
「バスクのキノコ、伝統料理と現在」
「ルイス・イリサール料理学校」講師 Federico Pacha さん

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地元の食材で手作りで料理を作ることを大切にしているというフェデリコさん。

料理には五味=5つの味覚があるといわれていますが、「6番目もある」と持論を展開。
「甘み・酸味・塩味・苦味・旨み」+「誠実さ」
つまり、「質がよく衛生的で公正な食べ物の味」が欠かせないとスローフードの考えを伝えていました。

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続いて、バスク地方について、そしてサン・セバスチャンという街について説明があり、今や日本でもすっかりおなじみとなったバルや、ピンチョス(つまみ)とソシエダ(美食クラブ)という独自の食文化について解説。

そしてバスク地方のきのこについて。料理学会は毎回テーマが決まっているのですが、今回は「自然のきのこ」がテーマです。

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イベリア半島ではカタルーニャをのぞき、きのこを食べる習慣はなかった。スピリチャルなもの、魔女の集会の場所と考えられていた。しかしバスクでは昔から身近な存在だったきのこ。すべての村にきのこ同好会があるそうで、収穫したきのこを分類し、毒性のものなど違いを教えるようにしているそうです。

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ここで、「ソシエダ」でつくられているキノコの伝統料理のレシピを紹介。この料理人によるレシピ公開も、サンセバスチャンが美食の街として発展してきた一因。企業秘密、背中を見ろ、とは言わず、美味しい料理のレシピを共有することで店のレベルを互いに上げていったのです。

バスク料理はシンプルで素材が重要。きのこのソテーに黄身をおとしたものということで、真似したくなった一品がありました。

東京「TERAKOYA」間 光男さん
「STYLE(様式)とINNOVATION(技術革新)」

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「ケミカルアプローチなど、どういうかたち、環境、雰囲気で味わってもらうかを考えている」という間さん。「エル・ブジ」の分子料理に影響を受け、エスプーマを持っていなかった時代、いろいろと実験して行く中で少しずつテクニックが増え、パートナーが増え、テクスチャーも増えて行ったそうです。

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「どんな食べさせ方がどう喜んでもらえるか、笑ってもらえるか、環境をととのえることを考えるようになった」と間さんが様々な業種の方と協力したものは、料理だけでなく、それを盛り付けるうつわまで。

光るお皿や、お箸を進化させた新しいカトラリーなど、料理は見方や考え方によって科学や化学にもなり、進化するのだと、勉強になりました。

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北海道・美瑛「バローレ」 才田 誠さん
「この地で表現することの自由さ不自由さ」

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美瑛「百姓や」とつながる「バローレ」細田さんの、生産者との信頼関係を築いている姿は弊誌「北海道生活」で紹介させていただきましたが、「ル・ミュゼ」石井さんに「鎖国の料理人」といわれるほど美瑛から出ないという才田さんのお話。

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「まだまだ美瑛には知らないことがいっぱいあるし、毎日見る景色も同じ景色がない。どんな場所にも変えがたい特別な場所であり、エネルギーをもらえる環境がある」と才田さん。この地を表現することを考え、例えばこの落葉(ラクヨウ)キノコを大根と華やかに盛り付けた一皿は、食材の背景を盛れる強みが出せるといいます。

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アイヌの人に「シケレペ」(ひしの実)など知らなかった素材を教えてもらったり、奥様が狩猟免許をとってジビエ料理を提供できるようになったり、と、地元料理のさらなる表現のために、常に努力を続けているそうです。

【道南ワインアカデミー】
道産ワインと食材のペアリングセミナー
東京「AnDi」 ワインテイスター ソムリエ 大越 基裕さん

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別会場で行なわれていたのが、今年発足した「道南ワインアカデミー」のペアリングセミナー。道南には、「はこだてワイン」や「おとべワイン(富岡ワイナリー)」に加え、「農楽蔵(のらくら)」が話題となったり、今年のニュースではフランスの「モンティーユ」や大手企業が参入するなど、あらたなワイン産地として盛り上げていく気運があります。

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実は「北海道生活」次号で、新しいワイナリーやペアリング(ワインと料理のマッチング)について特集をしているので、大変勉強になりました。

こうした有識者の方にお話を伺えるのも、ひいては人脈。「農楽蔵」の佐々木さんとフランスでともに修業していた大越さんの知識や経験は、北海道のワインの世界にも大きな戦力となっていきそうな気がします。

7時間にわたる1日目の学会、今年はパーティがなく、夜も西部地区へと場所を移して新しい催しも行なわれたそうです。大いに学び、大いに語らう、料理人たちの熱意あふれる時間は、夜を徹して翌日までつづきます。

2日目へつづく。

(編集長)http://twitter.com/yukikoyagi/

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