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2018年4月27日 (金)

函館「世界料理学会2018」レポート(2日目)

前のブログの続きです。

料理人の、料理人による、料理人のための学会「世界料理学会 in HAKODATE 2018」の二日目は、パティシエによるスイーツのお話から。

「チッチョ・パスティッチョ」大桐幸介さんは、函館でイタリアの洋菓子をつくっています。この学会を初回から支える最古参でもあるのですが、登壇することになり、しかもテーマが「山菜」って……スイーツに⁉

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ご本人も悩んで調べてみたら、山菜には広い意味でヤマブドウやキイチゴなど山で自生している果実も含まれていたのでした。なるほど!と私も目からうろこでした。

北海道を代表するハスカップは今や畑で栽培されるようにもなっていますね。日高では馬を育てている馬守りさんが放牧の合間に食べていたというクマイチゴを、養豚業の木村武麿さんが育てています。この方も学会を支える仲間の最古参のひとり。

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山の果実のほかに、たとえばフキノトウもケーキにしているという大桐さん。イタリアでの修業時代をふりかえり、「イタリア人は甘苦いものが好き」といいます。確かに苦いエスプレッソに溶けきれないほど大量の砂糖を入れたりしますね。

「あまにが」いという感覚、山菜特有の味わいにも共通するものがあります。

次は、常連となった山形「アル・ケッチァーノ」奥田政行さん。山形から東京、海外でも活躍している有名シェフであり、北海道では札幌や木古内町、せたな町などあちこちでお会いしています。

奥田シェフは何といっても講演が面白くて、ご自分の苦労話から独自の料理哲学までを徹底的に詰め込んだ内容は、一つの落語を聞いているような爆笑が客席から起こります。

今回おどろいたのは、料理人をめざすきっかけになったドキュメンタリー。

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一日目で紹介された、三國清三シェフの若き日のドキュメンタリーだったのです。まさか、そうつながるとは!

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そして学会というだけあって、奥田さんの独自の食材・味覚・調理に対する詳細図がどんどん出てきますが、とても読み切れるものではないので、ぜひ奥田さんの書かれている著書からご覧ください。

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そして山菜というテーマもしっかりおさえた奥田さん。レストラン開業当時はお金がなく、山菜やハーブは山で命がけで採っていたそうです。料理を口に入れたときの感じ方を「5:4:1」という独特の定義にしていました。

成功した料理人のお話というのは、苦難の時代やご本人の悩みをさらけ出していただくことがあります。

北海道を代表する「ミシェル・ブラス トーヤ・ジャポン」のシモーネ・カンタフィオさんのお話もそうでした。

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イタリア人であるシモーネさんは、「イタリア人がフランス料理をつくる」ことに周りからの反応や懸念に悩みながら、すべてを捨てる覚悟でフランス料理人の道をあゆみました。講義もすべて流ちょうなフランス語でした。

ミシュランの常連であるフランスの「ミシェル・ブラス」が唯一日本での支店を許したのが北海道・洞爺。ここにシモーネさんがシェフになるにあたり、ミシェル・ブラスさんは「目の前の自然を見てみなさい。ここで好きなようにやればいい」と言ったそうです。フランスでも「なぜイタリア人がミシェル・ブラスの大事な支店に?」と言われたそうですが、信頼して任せてくれたことに感謝しているというシモーネさん。

昨年このレストランに自分の誕生日を記念して行ったことがありましたが、シモーネさんは母が子供のころ読んでくれたというサン・テグジュペリ「星の王子さま」の一節をカードに書いてプレゼントしてくれ、気さくに厨房に呼んでいただきました。料理の素晴らしさももちろんですが、人としても素晴らしい方だと思っています。

【スペシャルセッション2】野菜料理の方程式を紐解く

「六雁」秋山能久さん、「アズール・エ・マサ・ウエキ」植木将仁さん、「オーグードゥジュール メルヴェイユ博多」小岸明寛さん、「リベルテ・ア・ターヴル・ド・タケダ」武田健志さんによるトークセッション。

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たとえばタケノコの下ごしらえにしても四人四様といいますか、それぞれ全く違う手法と考え方であることが興味深かったです。植木シェフには前回の料理学会で初めてお会いしたのですが、同郷ということもあり、石川県や金沢・能登の香りを東京で表現するという料理は一度味わってみたいと思いました。


【スペシャルセッション3】目利きの極意

こちらはメインホールと同時開催なので行けず……

金沢の老舗「銭屋」高木慎一朗さん、近江町市場の「堀他」浅市佳男さん、函館「マルヒラ川村水産」川村淳也さん、神経締めといえば「第21明宝丸」下山明仁さんのトークセッション。
一つの食材でも、料理人、仲買人、漁師、などいろんな目利きがかかわっている。その道のプロ中のプロのお話はぜひ、聞いてみたかったです。

さて、和食がユネスコ無形文化遺産に認定されましたが、「和食がなくなりかけているからこそ登録してもらわなければ」と日本料理の伝統と継続を大切に考えている「菊乃井」の村田吉弘さん。

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山菜といえば和食で活躍している食材でもあり、村田さんがていねいに一つ一つの食材と下ごしらえについて説明され、最後の仕上げはライブ動画で会場に見せるという趣向。

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手間ひまかけられた講義は、山菜の話を全くしないシェフもいるとわかっていれば、これだけやらへんかった、と京都弁でボヤかれていて、会場にもなごやかな笑い声があがりました。素材から料理へ、伝統から革新、そして継続へ。この言葉は二日間に何度も登場したキーワードとしてつながっていました。

ブルガリ東京にあるイタリア料理レストランのシェフ、ルカ・ファンティンさんのお話は、「イタリアには山菜のバリエーションがあまりない」というとことからのスタート。

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最高のイタリアの食材を東京に持ち込んで同じレシピで調理しても、つくれる味がつくれない。どうして?という苦悩の日々から、やがて日本にいるからこそ日本の食材でつくろうと路線変更。日本の生産者を訪れるうちに今までと違った世界が広がったそうです。

日本の山菜やタケノコ、キンキをつかった料理のレシピが紹介されました。

料理学会が始まったころは函館の料理人だったのですが、その後札幌で自身の店「GRAND」をオープンした因藤典文さん。単身フランスにわたり、ことごとくレストランで門前払いをくったその数は132軒。絶望の日々から父親の言葉で立ち直り、やがてフランスのレストランへ。帰国後は自分の料理を見つめなおすとき、子どもの頃の経験が役に立ったそうです。

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ユニークな「大人のかっぱえびせん」や、子どものころ採りに行った浜防風や行者ニンニクといった山菜の料理が紹介されました。

佐賀の「野々香」の小野智史さんも、子どものころから当たり前のように食べていた農家の野菜、近くにある野山の山菜の素晴らしさを佐賀から発信している人。

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佐賀といえば有田焼、うつわから料理まで、佐賀の食材を丁寧に盛り付けた「佐賀の御馳走」は、あたりまえにあるものを一皿にすることが、現代はいかに貴重なものなのかを考えさせられました。また、春の山菜はデトックス効果、夏の山菜は体を冷やす効果、などそれぞれに役割があることに、自然のものすごさを知りました。

先ほどミシェル・ブラスのお話がありましたが、同じ「ザ・ウインザーホテル洞爺」にある日本料理店「吉兆」で料理長をつとめていた大河原謙治さん。出身の群馬の田舎で見慣れていた山菜が、料理人になってからは市場で売られているものとなり、ここ北海道であらためて食材について見直したそうです。

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ミシェル・ブラスの「レストランはその土地の価値をつくるためにある。だから田舎でいい」という言葉は、前回の料理学会で玉村豊男さんがおっしゃっていた「地方には料理人が一人いればいい」という言葉とつながるような気がしました。

東京の中国料理「古月」山中一男さんは、日本中国料理協会の副会長をつとめられており、中国料理という長くて深い歴史をひもときながらの山菜のお話をしてくださいました。

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先ほどの「野々香」小野さんのお話と同様に、山菜には時期ごとに効能があり、まさに医食同源の話とつながりました。

中華といえばエビチリやふかひれといった派手なイメージがありますが、それに対して「清供」というシンプルな料理の世界もあり、そこに山菜や山野草というのは大切な役割があるのだとわかりました。

東北・宮城県からは新しい若い世代の二人が登場。赤い髪がトレードマークの「アル・フィオーレ」目黒浩敬さんは「情熱大陸」で一躍有名になった方。レストランを閉め、ワイナリーをオープン。食材に向き合う若者たちとともに、あらたな食の道を進んでいます。その思いに共鳴している「レストランmiura」三浦将尋さんも、漁師とともに山に入り、食材を得ること=命をいただく覚悟を肌で感じています。

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こうして二日間にわたる学会は終了。
恒例の集合写真では、深谷シェフが「登壇しなかったシェフも、みんな上がってきていいから!」と呼び掛けて、次々と見学していたシェフたちも壇上へ。

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山菜、という一見地味なテーマに、料理人や様々な職種の方々が登壇した料理学会。そのどの話も面白く、それぞれに響きあい、つながり、一筋の光が見えたような二日間でした。

毎回この学会に参加し、この場で、また「北海道生活」の誌面で紹介してきましたが、写真や文章だけではほんの一部しか伝えられません。ぜひ、函館で、目の前で体験していただけたらと思います。

次は、ぜひ一年半後に。みなさんの笑顔と熱意と、あたらしいテーマを楽しみにしています。

(つづく)

(編集長)http://twitter.com/yukikoyagi/

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